2012年5月28日月曜日

Vol.148「歩いてどこまで行けるかやってみよう大会」の巻

すっかり初夏、この初夏という単語を浮かべる時、何かダジャレが言いたくなるのは何故でしょうか。きっと空気が澄んで、気温もちょうどよくて気分がいいからだろうな。

うん、初夏は気分がいいし、夏がくるっちゅう期待感もある。いい季節です。
草刈り後のどくだみ草の匂いをかいだ。昔、実家の裏にわさわさ生えてて、ばぁちゃんがそれを全部刈って洗って干して、どくだみ茶をつくってくれた。家の裏に生えてて、なんだか暗くて、名前もアクの強い名前だけど、お茶になったらおいしいんだなこれが。
そんなことを思い出させてくれた今日この頃、いかがおすごしだろうか。

ちょっと前にここでも、歩いてどこまでも行ってみよう、そう考えるだけでワクワクするぜ的なことを書いたが、実際に歩いてみた。渋谷のハチ公前より西へ。12時すぎに出発。ポケットに文庫本とアイポッドと携帯とタバコと財布、背中にギターをしょって。これだけ持ってたら本当にどこまでもいけそうな気になる。何があってもどうにかなりそうな気になる。約束も見返りもない、ただ歩いていくだけ。とりあえず246を歩いてく。渋谷にも川が流れていて、頭の中で歌が流れてくる。

三軒茶屋をこえて多摩川へついて、意外と近いな神奈川と、バーべキューで賑わう川辺で一服し、また西へ。246は大通りなので車の量も多く、またところところで渋谷からの距離が表示されている。そのためか、景色をゆっくり眺めながらというよりか、「おー何キロきた」と一人でもっと遠くへと歩いた。

昔、オートバックスの宣伝で中畑清が「すべての道はオートバックスにつながっている」なんて言っていたが、実際にオートバックスがあって中畑をおもいだす。その頃ぐらいからあたりが暗くなってきてワクワクしてくる。

歩く前、山梨までいけたらおもろいなとか、箱根で温泉に入るのもいいなとかおもっていたが、歩いてくうちに、ちっと遠すぎるなと気づきはじめる。調べていけばはじめから遠いのはわかりそうなものだが、調べず、自分の地理力と体で知ったほうがおもしろいし、目的地がわかっているより何かを期待できるので足どりがかわる。となればどこに行こうかとなって、ずっと看板に出てた厚木の駅前でちろっと歌って電車で帰ろうかという気分になってきた。んが、他に選択肢はないかとライフライン、ここでコンビニの地図を立ち読みし、現在地と他のいけそうな道を探す。すると246と交差して16号線という道があり、それを左にまっすぐ歩いていくと横浜、そこを突き抜けて横須賀まで続いてる。横浜も大学時代によく行っていたので横須賀に惹かれる。なるほど自分の位置と他の道がわかったのでとりあえず厚木にいくか、横須賀に行くか迷いながら246をまっすぐ行く。歩いていくうちにやはり現実問題、横須賀もかなり遠いし一晩歩くことになりそうやなぁと、ここは厚木まで行って帰りは電車だなぁという気分になってくる。

すっかり暗くなり、足も疲れて飽きてきた時、16号の前に12号線という道があり、その交差点のあたりの雰囲気がよかった。まぁまぁ大きな通りで、横浜方面へ続いてるとのことだった。体は自然と左に曲がっていて、一気にヤッホーな気分になる。すると道はすぐに小さくなって田舎道に突入し真っ暗の中、音楽を聞きながら延々歩いた。シェリルクロウやトムウェイツやらと前に進む。前に進みながら聞く音楽。どこまでもいける気になる。

途中、田舎の叔母より電話があり話しながら歩く。ブログにも書いたが、電話を切ったあと目の前に一軒のお店があった。看板には「ココペリ亭」とありびっくり。「ココペリ」これは数年前から興味をもって、歌にもしているインディアンの妖精の名前。この妖精が笛を吹くと緑が芽吹き、獣は交尾をしたり、命に溢れ、人々も踊りだす。素敵な妖精だなぁとTシャツにもしたくらいであったので、驚いて一人テンションがあがってしまった。

店に近づくと閉店の看板が出ており、うっそーんとあきらめきれず店の前にいると、若い店の人が出てきてくれ、その人に「一杯だけのませてもらえないですか」と尋ねると「ゲームに参加されるならいいですよ」と言われ、なんのゲームかわからなかったが、さすがココペリ楽しいことが好きなんだなぁと即答「やりますやります」。中にはいるとライブもできるバーであった。その日は音楽大学生のライブがあったらしく、大学生達で賑わってた。で、そのゲームというのが「ききウーロン茶大会」。そのお店のお兄さんが仕切る、出演者とお客さんのライブ後のおまけお楽しみ会みたいなものらしい。
名前はなんというんですか?と聞かれ、中尾です!と答え。じゃ中尾さんはDチームね、となり大学生達にまざった。ダウンタウンがやっているような「わたしがのんだのはこのウーロン茶じゃありません!」「ピンポンピンポン!」「イェーイ!」的な。外れたら罰ゲームでドリアン味のキャラメルを食べるというものであった。

案の定外れ、ドリアン味のキャラメルを食べ、そんなに臭くも不味くもなかったが、その輪をみださぬよう5割増しくらいのリアクションで「うわっくっさいくっさい!」などと、いい大学生にまざるおじさん一人。大学生の時に大学生ノリは苦手だったが、ココペリの力をかりて大学生ノリにまざらせてもらった。
ゲームもおわり大学生達も帰り、カウンターで常連のお客さんとマスターとしっぽり飲ませてもらう。店の雰囲気もよく、憂歌団の木村さんなどもここでライブしているとのこと。音楽の話やら、いろんな曲をきかせてもらったりと、疲れた体にも心地よく気持ちのいい時間をすごさせてもらった。そこで聞かせてもらったアジアサンライズのJEEPって曲がかっちょよかった。燃える。

すっかり夜もふけまくり、んじゃいきますと店を出てまた歩いた。歩いたらばこれ酒を入れたためか、いったん休んだためか、足がぱんぱんになっていて痛い。なるほどどこまでも歩いていける気がしてたが、足は痛くなるんだなとおもった。夜道とぼとぼ横浜方面へ。足はイタかったが、おもろい出会いやらただただ歩くおもしろさやら、来てよかったなとおもった。

朝方横浜につき、海をみて帰りたいなぁと横浜駅の裏へいき、海をみてうとうとしながら文庫本を読んだりしながら、ゆっくりした時間をすごして帰りは電車に乗ってぴゅーっと帰った。そして家に帰りギターをおろして気づきボソっと声に出た、「ギターいちども弾かなかったやん」。

でもよかった。ギターも持ってるだけで無敵な気持ちをくれる。
ココペリ亭に出会えたのはおもろかった。でも歩くために歩くその時がよかった。どこまでもいける感覚。現実問題より、どうなるか行ってみようと左に曲がった瞬間におもいだす感覚がたくさんあった。調べないでいくのも気持ちがいい。もっと何かもっといい情報をとおもわなくていい。あるだけの知識と体、なにが起こるか楽しみな気持ちだけがすべて。そこに音楽は流れ、どこまでも気持ちをつれていってくれる。

暮らしの中で夢ばかりみてもいられないし、単純なことばかりでもないけど、現実問題だけになってノルマをそつなくこなすだけになってもつまらない。現実を夢に近づけてく、一歩進んだら一歩近づく。あったり前なことをおもいだす。確かな実感、充実感に満たされた。いざとなったらどこまでもいける、心に自由はやっぱり必要だ。足が痛くなる距離もわかった。夢と現実と自由、3つのスーパーボールが洗われたような気分。それをポケットにいれてまた暮らしにもどってく。生きてる実感、ただ歩くだけ、それが楽しいとおもえたのがよかった。一見無駄に思えることでも、体使ってやってみないとわからんことたくさんあるようです。小さないい旅でありました。とさ。
またいつか、方角変えてやってみるべ。