2007年7月30日月曜日

Vol.90「バイカー中尾の福生ツーリング日記」の巻

 今年の夏は曇りばっかりかと思いきや、25日より晴れた。暑いぞ東京、ムシムシするぞ東京。全国の、世界のみんな、そちらの天気はどうよ、いかがすごしてるんだ?
 地震の被害にあってしまったみんなは、ただでさえ暑い夏にどう暮らしてるんだろか、この文を読むことすらできないでいるんだろな。ヨーロッパの猛暑48℃って、どんだけだ。30何度でうなだれているというのに。

 騒音と排気ガス、湿気や時間。東京の夏の中にいて、きれいで冷たい清流を想う。
 会いに行きたいと思い立ったが吉日、海パンに着替え50ccの我がアメリカンバイク/ズーマーにまたがり、というか足を揃えて、いざ清流へと向かった。東京脱出だ。
 
 ペケペケと静かなエンジン音を轟かせて、車の間を抜けていく。荷物は少ないほうがいいがバッグの中に本とiPodをいれておくと、楽しみもますし、心強い。
 
 少しいくと町並みもさびれてきて時間もゆっくりになる。もすこしいけば田園風景か、狭いな東京と思いきや、大都会があらわれまだ吉祥寺だと知る。甘くなかったか東京だ。
 吉祥寺をぬけていく。どこに清流があるのか知らないが、すべての道はオートバックスに続いてるのと同様、「なんか山の方にいけばあるだろう」でいく。

 すぐに街路樹一本道があり、木陰の中を走ってく。気温も涼しく森林浴だ、泳いでるみたいで気持ちがいい。が、バスの後ろについて走ると、黒い排気ガスをまき散らかされて、いまだにそういうことやってっからヨーロッパ48℃になっちゃうんじゃないのかファック!と心の中で罵り、追い越してく。
 
 交差点の脇に小さなタバコ屋発見。「ちょっと一服していけば?」と外に置いてあるベンチに書いてあり、「していくわ」とバイクをとめてフルーツジュースを飲む。
 店の中はタバコとライターしか売ってないわりに広く、壁には店主が書いたのであろう、「苦しみの数だけ幸せはおとずれる」うんぬんかんぬん。みつを的な文句をカレンダーのうらに書いたのが貼られていて、興味をそそられる。外のベンチの肘置きにはコンビニの袋が何枚もかぶせられていて、クッションがわりになっており、言っちゃ悪いが洗練されてない。けど、こういう静かなおもてなしは気分を楽にしてくれて、楽しくなる。

 店主は白い髪とヒゲの初老。もう一つのベンチに座り、こっちをチラリとみては新聞を読んでいた。「この辺に泳げる川ないですか」と尋ねると、「遠くから来たのか」と聞かれ、少し遠くから来たことを伝えると、その土地のことやら、店主の昔の仕事やらを聞かせてくれた。東京オリンピック前はここらへんの公園は米軍基地やったことやら、そこのアメリカ兵に車を売ってたことやら。「へー占領みたいな感じやったんですか」「んー占領っちゅかな、負けたからな」そんな会話を繰り返し、結局、川にいくには夜になるし、山にいけば気温も下がって寒くなるぞということだったので、(ここまで書いといて何だけど)清流行きをあっさり断念した。

 ……のかわり、来る途中より看板にかかれていて、気になっていた福生(ふっさ)を目指すことにした。
 福生と言えば、店主の言っていた米軍基地があるし、海パンはいてきたけど森林浴したし、まぁいっかと。それに米軍基地=そのまわりにはうまいハンバーグを出してくれる店があるはずと、いざハンバーグを目指すことにした。

 途中、ほんとにオートバックスがあったが、用がないのでその先へ。
  
 福生についた、すぐに基地を発見した。広い。滑走路の横の側道を我がアメリカンバイクで走った。広い、広い、でかいぞアメリカ、基地でかい。トップガンのテーマ曲も流れだし気分よく走っていると、金網フェンスにしがみついて基地の中をのぞいてる人を発見したので、僕ものぞいてみることにした。その人は全身青ずくめのサイクリングの格好(競輪選手みたいな)をしていて、小太りの50才くらいのおじさんだった。また、あのピスタチオの殻みたいな、カブトガニの甲羅みたいな形の青いヘルメットをかぶっていて、サングラスできめていたので、コミカルだったが、「何が見えるんですか」と聞いてみた。おじさんは腕時計を見て、「この時間になると、今日はこっちから風が吹いてるから、あの方角かな、でっかい輸送機が着陸してくるんだよ。」と教えてくれた。おじさんはデジカメも準備してるくらいなので、よっぽどかっこいいんだろうと、一目僕も見ておこうと思い、二人並んで金網の向こうを見ていたが、なかなか来ないので、ハンバーグ屋さんの場所などを聞いて時間をつぶしてたが、やっぱりこないなーと思っていると、ピスタチオのおじさんも「今日はこないみたいだね」と、あっさりサイクリング車に乗ってシャーっと帰っていったので、僕もいざハンバーグ屋さんへ。

 教えてもらった16号線にいくと、その通り沿いにはアメリカ風味な店がならんでいて、リトルトーキョーより、リトルなアメリカがあった。思い描いていた大きなハンバーグをペろりと食べて満足。僕はアメリカが好きだ。でっかいからね。清流はみれなかったが、そう遠くでもないけど、来たことのないとこに来てみて、知らなかった雰囲気を知れてよかったなぁーとおもった。やっぱりこれ、今年の夏に四万十川を見に行こうと、次の旅を決心させるツーリングでありました。

 ……んが、帰り時は夕暮れ時で、アメリカ風味の店や、カタカナ英語の看板が少しだけ寂しくも見えたりして。これもおみやげかと、我がアメリカンバイクを走らせました。

 また、タバコ屋の店主の言う通り帰りは肌寒く、行きがけに罵ったバスの排気ガスがあたたかく感じ、「さっきはわりかったね、いろいろあるわね、ほどほどにね」と追い越して帰ったのでありました。
  
 四万十川の手長エビが“おいでおいで”をしとります。

P.S.イチローがマリナーズとの契約を5年更新した際に、インタビュアーから「ずっと一つのチームでプレーをした、または、している選手をみてどうおもいますか?」との問いに「茶髪が流行ってる中で黒髪が美しいように、輝いてみえています」的な返答をしていた。自分が黒いからじゃなく、茶髪や、転々としている選手がダメとかじゃなくて、なんだかおもろい、サムライなメッセージ。世界の中で闘ってることがたくさんあるんだろうなと思わせる、素敵なコメントだとおもいました。

 「スタ―連れてって」と 言っておりました。
 思わず入りたくなったけどちと違う。 でも間違えられる時はいっつもこれ。