2023年9月30日土曜日

Vol.283「ぐんぐんと満ちる月の力をもらって」の巻

  9月、朝夕は秋らしくなってきたけど、まだまだ日中はあちーでやんすね、9月の終わりにこんなに湿気ってあったっけ?ってな月末ですがいかがお過ごしか? 今日は月がキレイにみえた。歩いてたら建物の向こうから出てきてすぐ近くにあるようなお月さん。いい月だなぁ、キレイだなぁ、と白くて優しい大きな力をもらってありがたい。調べれば明日が満月なようだけど、今日みたいな月の満月に向かうぐんぐんとした感じが僕は好きだ。

 10月6日・下北沢シェルターにてインザスープワンマン「ジュテーム2023~3年かくれんぼ~」が近づいてる。そこにぐんぐんと向かっていっている日々もまた楽しい。SNSではギターのハチがサブスク記念として全曲解説に取り組んでる。ギターリストの視点から解説をしていて面白い。あの時ハチが考えていたこと、感じていたことを知れるのも面白かったり、当時気づけなくて切なかったり。自分は今日スタジオにいき曲順を並べてほぼ全曲を歌い個人特訓をしてきた。曲ごとに色んな気持ちになった。ここでも何度か「曲は箱のようだ」と書いたけど、一曲一曲に色んな想いや景色、匂いが詰まってる。秋の匂いがそうさせるのか少しセンチメンタルな気持ちになったりもして。

 ドラムの吉田くんからバンドのボーカルに誘われて一ヶ月ほど「やるわ」と言えず、吉田くんは平塚から下北沢の僕の家に説明しに通ってくれた。「グランジとあんたのフォークが融合したものがやりたい」などなど吉田くんの頭にあるビジョンを聞いていてぐんぐんとワクワクしてきた。しかし、大学を卒業してからのことだったので、本当に覚悟をもってみんなでできるのか慎重になったし、団体行動が苦手な上にバンドという形態にどこか苦手意識があった僕は吉田くんを試すように答えを出さずにいた。最後「今日ダメだったら諦めるわ」と言って帰ろうとしたので「やるわ」と言った。吉田くんはいつもハイネケンを一本買ってきてくれた。

 初めてのリハで声を出しても爆音でかき消されて、路上で無敵だった僕は落ち込み、心をへし折られたまま家に帰り体育座りでシャワーを浴びた。翌日吉田くんに「やっぱりできない、やめるわ」と1日でやめようとしたら「フェーダーをあげればいいんだよ」とPA機材のツマミをあげてみせて解決。そんなことも分からない地点からのスタートで年齢はすでに23歳だった。分からないなりにも自分の信じることを精一杯やった。ハッタリもかました。自分はフォーク上がりで卒論も「日本におけるフォークソングの受容と変容」というタイトルで、フォークのルーツを調べて辿り根っこを生やしてたので、それが自分にとっての武器になった。大抵のバンドマンが知ってることを知らない代わりに、その人たちが知らないことを僕は知ってた。あの時代、たくさんあったバンドの中で角度を変えて食い込むことはできたんじゃないかと思う。その代わり最初はメンバーと意見が合わなかったりもした。徐々に解ってもらったし、僕もメンバーの言ってることを理解するようになった。

 少しずつバンドとしての塊ができていってぐんぐんと力をつけていった。メンバーには本当にいろんな感情をもった。ネガティブなものやポジティブなものや、気持ちが離れたり近づいたり、バンドって修行だなと何度もおもってきた。紆余曲折ある中で、27年経った今でもリハに入り音を一緒にバンっと鳴らせば唯一無二の音楽の中にいれることが嬉しくなる。生まれて生きてきてこんな場所に自分がいれることがありがたく感じる。メンバーそれぞれにも色んなことを思ってきたんだなぁと思う。今思えば器量のなさでうまくいかなかったことも多々あったけど、同じくらいに、一緒に乗り越えて見てきた景色もたくさんある。

 神奈川から東京進出した頃、このバンドとしての強みってなんだろうと考えたことがあった。僕が行き着いたのは「メンバーそれぞれの人柄じゃないか」だった。うまい具合にみんな個性がバラバラでそれぞれにそれぞれがそれぞれで面白く、MCなどではそれを伝えようと思った。音楽面でも寄り添うとかではなく、一曲に対して4人が自分としてぶつけ合う化学反応みたいなものがあって、その分一筋縄ではいかないこともあり、予測不能、誰にもこのバンドのことは解読できない。アメーバのように変化するインザスープは生物だ。ハチが解説で書いてた「絵を描くようにギターを」という感覚がみんなにあって、当たり前だと思っていたけど、結成当時からそんな感覚を共有できたから僕はバンドのボーカルをやれたんだと最近よく思う。

 釣りをする時、海の満ち引きで月の引力の関係性を感じる。今まで何度もその引力に僕自身が包まれたことがあった。例えば満月の夜、見えない海の中の魚が、餌を食ってくるタイミングがわかったり。波の動きや風、月の光と自分の呼吸が一緒になって心が満たされて万有のものと一体化したり。それと同じようなことがインザスープでも何度もある。音の中で幽体離脱をしているような、自分が歌ってるんだけど、その自分を自分がみているような感覚。勝手に体が歌ってる感覚、車でいったら自動運転モード。愛の中にいる感覚というか、羊水の中というか。そうなれる時、音楽人として幸せ、冥利に尽きる。そんなことを感じられるなんて、奇跡的な音を鳴らしているバンドだと思う。そんな僕らが作った箱に、それぞれの想いや景色、匂いをもって共有し、感じあってくれる人がいるのが本当に嬉しい。少々宇宙規模の話になってしまいましたが、ぐんぐんと満ちるように10月6日へ向かい、下北沢シェルターにてぜひ一緒に楽しんでもらえたらと思いながら今月はこの辺で。


たまには肉をガブリと食べて
店の雰囲気もいがったのでパシャリ

夏の終わりのハーモニーを井上ユウ水と玉置浩シとして

雨の新宿が綺麗に見えた雨の日

レッドクロスにもポスター貼ってもらいました。ありがたい。

スタジオにて一人特訓。

ぐんぐんと、光浴びていざジュテームへ。

レッツゴっ!

超えたら、また次の山へ。

諭介がお答え致します

■「諭介さんのコラムを読んで調べてみたのですが、「初期衝動」っていう言葉の意味ってはっきりしていないんですね。頭で考えたりせず、内から溢れ出る感情、情熱のようなもの。なるほど、好きなものに対して、これがあったら無敵なんでしょうね!10月6日ジュテームが近づいてきましたが、私も難しいことは考えず、ただ楽しむぞ~!そんな中、突然始まったX(旧Twitter)のハチさんのサブスク全曲解説にもとても楽しませてもらっています。たまに難しいところ、よくわからないところもあるけど、その辺にもハチさんの初期衝動を感じてしまいます!(笑)ジュテームでは何が聴けるのかな~♪楽しみにしています!」
(A.T 2023/09/26 12:22)
→そうだね、うまいこと言いますな。ハチの初期衝動やね、所々記憶が違ってるなぁと思うところがあったりするけど、おもろいね、ハチの初期衝動。機材の話とか僕もわからんのがまたおもろい、頼もしいね。ジュテーム、こちらも楽しみますんでぜひ楽しんでください〜。

■「初期衝動を持って何かをやってる人は、その何かに対して真剣に立ち向かっていて、楽しそうで見ている方も自然と引き込まれていく感じがします。
諭介さんにもそれを感じるので、諭介さんの音楽を聴いていると楽しくなるし嬉しくなるしワクワクします。無敵になれます。
もうすぐ久しぶりのジュテーム、楽しみですね」
(夕陽 2023/09/28 22:16)
→楽しみやね、初期衝動あるね、ぼかぁフォークの流れもあって普遍的な曲と言うのにこだわりがあった。時代が変わってもずっと歌える歌。そうしていてよかったと思う。時代が変わっても箱の中にその時の自分を入れられるから今の歌として歌える。無敵になれる歌、これからもぜひ楽しんでくださいませ。

■「ハルカカナタさんの登場曲で「東京野球」を使っていたってすごく嬉しいですね。
音楽はほんとすごいなって思います。心に深く入り宇宙をも思わせてくれるインザスープの音楽に諭介さんの歌にいつも感動やらいろんなものをいただいていて、どうやってお礼をすればよいのだろう…?といつも思うくらいです。目に見えないものほどそうゆう力が大きいのかもしれないなって思います。
今年初めて食べたシロクマ☆特に美味しいと感じなかったけれど、諭介さんの写真のシロクマはすごく美味しそう☆色んな種類があって鹿児島名物とはじめて知りました」
(hitomi 2023/09/29 16:04)
→子供の頃から身近にあったよシロクマ、でも今年が1番美味しく感じたわ。そう、インザスープの音楽は宇宙を感じるのよね、それに僕はただ歌わされてる感じやわ。聞いてそれを感じてくれてありがとう。

2 件のコメント:

  1. 3年ぶりのジュテーム楽しかったです!吉田くん演出の諭介さんの小芝居から始まったり、ハチさんがX(旧Twitter)で解説してくれたことを思い出しながら聴いたり、私がいたところからは一番よく見えたKさんはニヤニヤしてて、諭介さんはタンクトップでラブソング!wwwそういう景色や想いが印象に残る、今年は今年のジュテームでした。3年ぶりに開催されたこと自体もそうですが、50歳になってもそれぞれの個性が生きていて、1曲の中でそれぞれが1つになるライブは変わらずかっこよくて嬉しかったです。それが宇宙というのもわかるような。生きてる限りという言葉も心に残りました。一年が早い。来月は諭介さんの弾き語りワンマンですね。楽しみです。

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  2. ジュテーム行きました。ゆらゆらと音の波に乗ってとても心地よく楽しい時間でした。奇跡的にIn the Soupの音楽に出逢えた事が本当に嬉しいし幸せだなあって思うし、この出逢いを一生大切にしていきたいなって思います。
    これからもどうぞよろしくです。
    来年のジュテームもどうか無事に開催されますように。

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