2006年5月29日月曜日

Vol.76「2006年5月最近のニュース」の巻


 ッンビカッ! バリバリィッ! ドォーン!! カミナリィ激しく夕立ボーボー、横殴りの雨ん玉、針刺すように顔叩く。
 ッンビカッ! バリバリィッ! ボーボーバチバチ! 埃立った道路を街を人を、んでこの頭ん中を叩いて冷やして洗い流す。
 買い物や約束や仕事やらの帰り道、それぞれにそれぞれですれ違う人達がいっせいに雨に濡れ、いっせいに走りだす。運動会だぁ、夕立の。 
 笑いましょうよ、はしゃぎましょ、雨に濡れて踊りましょうよってな気分で僕も雨宿り。
 
 向かいのマンションの管理人のじいさんが、雨の中傘をさし玄関先でしゃがんで、なにやら足元に手を伸ばした先に、でっかいかたつむりだ。じいさんはかたつむりのからをちょこんちょこんとノックして、立ち上がり見守っている。かたつむりはかたつむりのスピードで玄関先を横断し、じいさんの肩はがんばれがんばれと言ってるみたいで、なんだかおもろい気分になる。 

「こんな山の中に絵本を読みに誰も来ないよ」と言われてから10年。
 宮崎県の木城ってとこの、山の中にある「絵本の郷」が10周年だ。
 はじめここは町おこしの宿泊施設としてつくられてたところに、版画家のいくともさんがアイディアを求められて提案したのが「絵本の郷」だったという。町おこしの人たちは半信半疑だったらしいけど、いくともさんの思いつきが10年ゆっくりと歩み進んでいることを嬉しくおもう。ついでに館長になっちゃったいくともさんは、絵本の郷にいくまでの山道に絵本のタイトルからとった名前をつけて標識をだしていたり、池の上にステージを作ったり、演奏者をよんで山や空やカエルや人に響かせて遊んでみたりと、いろんな仕掛けをつくっては町おこしというよりも「地球おこし」「宇宙おこし」「人おこし」をしてるんじゃないかとおもう、ってなこと書いてると、「いや、いろんな仕掛けに人をひっかけるのがおもしれぇだけよ」と笑って言われそうやけど、いくともさんはいろんな人の心にかたつむりを這わせて遊んでるんだとおもう。
 前にも書いたけど、インザスープもライブをやらしてもらったことがあった。たくさんの絵本の置いてあるその部屋を、いくともさんやスタッフの方々がコンサート会場にしてくれた。絵本とお客さんに囲まれて僕らは音楽を鳴らした。
 そのコンサートの途中でいくともさんが「この絵本を読んでみて」と「だくちるだくちる」という絵本を持ち出してきて、僕は読み始めた。
 本を両手でもって表紙をめくる。
「むかしむかし」
 ページをめくる。
「イグアノドンがいた」
 いきなりイグアノドンがでてきて笑ってしまったので、始めからやり直して読み進んでいくと、いつのまにか僕はイグアノドンになっていて、「だくちるだくちる」と歌っていた。
 メンバーも音楽を鳴らし火山になったり大地になったりして、僕らは宇宙の中にいた。
 いくともさんはよく「証拠を残すな」っていうけど、あのライブはずっと心に残ってるな。恐るべき絵本だ。絵本は少ない言葉の中で、きづかなかった気持ち、自分がいることを教えてくれておもしろい。
 これからも何十周も何百周も、宇宙を巡っていくんだろうなとおもう絵本の里だ。10周年おめでとう!
  
 最近おもうのは、おもろいとおもうことや、やりたいとおもうことの気持ちは大人になっても変わらんもんやなぁってこと。大人になると、っつうか僕のことだけど、変な勝ち負けが出てきたり、頼まれてもないのにあせっていたり、すけべな気持ちがでてきたり、失望したり、臆病になったり、疲れたり、愚痴が細かくなって増えてる気もするけど、おもろいなっておもうことはあんまり変わらんね。
 全部を一笑できるおもろいことを!っておもわせられる2006年5月、最近の世間のニュースばかりだ。あの管理人さんやいくともさんのように、自分のかたつむりをゆっくりでもしっかりと這わして生きていけたらと、そんなかたつむり達がもっと広がっていけばといいとおもう僕の2006年5月今日この頃、ッンビカッ! バリバリィッ! ドォーン!!だ。
    
 P.S.いくともさん(黒木郁朝)の版画もいいよ。

 ヨ-ダみたいな犬発見。ずっとこっちみてる
聞いたらまだ生まれて間もないんだって。生まれた時からじいさん顔だ。