梅雨なのか、夏なのか、気温低く過ごしやすい毎日が続いておりますね、東京。夏はいろんな虫達に出くわして、いやーすごいな、気持ちわるいな、かわいいな、かっこいいな、信じられない形だなぁなどなど、本当にいろんなことを思わせてくれますね、虫って。「みんな違ってみんないい」金子みすずさんの言葉を思い出したりします。それに比べると人間、特に歌うたいなんかはそれぞれにもっと違っててもいいんじゃないかとさえおもいます。岡本太郎さんの言う「芸術は爆発だ」。音楽も芸術だとすると、もっと爆発しなくちゃなと思ったりもして、虫に負けてるなぁとおもう今日この頃、いかがおすごしか。
先日、ぼくはギターを購入した。というわけで前にも一度書いたかもしれないけど、新しい仲間が加わったということで今回は今一度整理すべく「ギターと私」的なギター遍歴を書きたいとおもいます。
記憶を辿れば幼稚園のころ、家にはオモチャのバンジョーがあって、ある日好きな女の子が家に遊びに来て、その子の前で弾くふりをしてカッコつけたことをなんとなく思い出します。
よく女の子にモテたいからバンドを始めたとか音楽を始めたなど、始めたキッカケをそのように話す人たちがおりますが、え、だってみんなそうでしょ?的なその言葉を聞くたびに、そうかなぁ、自分は違う気がするなぁ、そんなことではなかったような、、と思っておりましたが、この幼稚園の時の感覚は、好きな女の子の前でカッコつける道具としてバンジョーを構えるなど、すでにもうモテたくてってのを実行してるわけですね。もれなく自分も「モテたくて」なんだなぁとおもいます。
次に中学だったか、親戚のおじさんがフォークギターを持っていて、Em(イーマイナー)というコードを教えてもらって弾いたことがあるも、なにかもうひとつビビっとこなくて、すぐあきらめました。Emが地味すぎたのでしょうか。弦も硬くて手が痛くなってやめました。
そしていよいよ高校1年の時、学校の中庭で友達にGのコードを教えてもらった時にやっとビビっときました。うわーすげーそれっぽい音が出てるわ、と。何度も弾いて次のコードを教えてもらい、長渕剛のとんぼの「うぉーうぉーおーおーおーおー」のとこが弾けるようになり感動し、学校のガットギターをそのまま家に連れて帰って家で弾き倒しました。これガットギターとフォークギターでは弦の作りが違っていて、ガットギターのほうが弦が柔らかいんですね。なんぼ弾いても痛くならないし、音が柔らかいので家の中でもそんなに騒音にならない。これで練習してなんぼかスムーズにコードチェンジができるようになってから、今度はおじさんのフォークギターを借りて弾けば、前にはわからなかった、フォークギターの響きのよさを感じてそれから指先の皮がべらべらむけるほど毎日弾いて、べらべらむけるほどになんか嬉しくて、指先が硬くなっていくのがうれしかった。右手の弾き方も友達に教えてもらったり編み出したりしながら、少しずつ弾けるようになって、ひとつ何かが身につく度に、自信満々になり、今思えば何もできていない段階だったろうけど、ここまできたらもう世に出てるミュージシャン達と大差ないな、あとは曲だな、自分を歌っていこうとなった。ほとんどのギター弾きがそうであるように、世間知らずにしても、自分にもできるとおもわせてくれるギターってありがたく、ほんとにすごいなぁとおもう。
次に高一の時に掃除の時間に草刈機で草を刈っていたら、あまり知らない同級生が前でふざけていてそのまま足をざっくり切ってしまい救急車が運動場にきて運ばれていき、自分は呆然としてあとでお見舞いにいった。そこから病院をぬけだしてお好み焼きを食べに行ったり、退院後は釣りに行ったりした。その友達が高2からは自衛隊にいくことになり文通をした。自衛隊での理不尽なつらさを知り、なんかできることはないかと家で自分のラジオ番組をカセットテープに吹き込んで作って送った。学校での出来事、夢、その友達が好きだった女の子のことなどをDJ風に喋って、「それじゃあ曲いこうか、長渕剛で“素顔”」なんて曲紹介をし、自分が弾き語りで歌ったりしてた。そんなことを繰り返してるとある日家にギターが届いた。その友達からだった。自衛隊でもらった給料で「これでがんばって」と僕にギターを買って送ってくれた。その当時長渕剛が使っていたのに似ているタカミネの黒いエレキアコースティックギター、略してエレアコだった。その黒光りに感動し、その友達の気持ちに感動して、そのギターを弾き倒し、上京してからも畑の真ん中で弾いたり、とくにバンドを組んでからデビューして間もないころまでを引っ張って行ってくれたギターだ。
次に上京してから、ここはひとつ今からの覚悟の一本が自分で欲しくなり、お金を貯めて神奈川の平塚から新宿は新大久保だったかのクロサワ楽器へ行って、モーリスのフォークギターらしいフォークギター、マイク内蔵ではないギターを買った。店員さんが強くお薦めしてしてきた。自分もフォークらしいギターだと気に入り買ったが、後日、路上で歌ってると知らないおじさんが「さすがマーチン、いい音するねぇ」と近づいてきてネックにあるメーカー名を見て「これモーリスじゃないか」と言い、なんですか偽モンですかと聞くと「偽モンってわけじゃないけど」と納得いかない様子でどっか行った。その頃ギターのメーカーのことなど何も知らなかったし、どうでもよかったんだが、だんだんそういうことを知っていき、何年か経ってそのおじさんが言っていたことがようやくわかった。マーチン社のロゴを真似してモーリス社が作ったギターだった。確かに偽モンってわけじゃないけど、知ってしまった以上、わかった時はなにかこうモヤっとした。あの店員さんの強い推薦はそういうことであったか、さすがに売れないもんで、上京したてで訛りの抜けない田舎もんにゴリ押ししたに違いないと。が、今となってはそんなことも逆に貴重に思え、上京した時の気持ちもつまってるこのギターが可愛くて、部屋に立てかけいつでも弾けるようにしてある。
次にエレキギター。In the
Soupを組んですぐにエレキも必要になり、新大久保の中古屋さんに行きチャンドラーというあまり知られていないメーカーのエレキ、オレンジ色の見た目だけで買った。エレキギターを買って、自分はバンドマンになったんだなぁと実感が湧いた。演奏収録中に興奮してしまい、叩きつけて割ってしまったことを後悔している。
次にデビユーが決まった頃、ここは一発これからの覚悟も決めて一本と、新宿のクロサワ楽器でギブソンのSJ-200を買った。その頃にはメーカーのこともだいぶわかってきて、やっぱり自分にはギブソンだろうと、その中でも大きな、スーパージャンボ200。その時は店員さんがギタームツゴロウみたいな人だった。ギター愛が溢れているなぁと思ったのと、ほとんど見た目だけで購入。
でっかいから頑丈だろうと、ライブ中にボディーを叩いて音を出していたらバキッとボディーが割れて、ローンプラス修理費でとてもお金がかかった。
次にデビューしてから間もない頃、そんな、クロサワ楽器のギタームツゴロウさんのほうから、クロサワ楽器で開発制作したギターを使ってみないかと連絡があり、みせてくださいとライブ会場に持ってきてもらった。クロサワ楽器が作ったスタッフォードというメーカーの黒いギター。ムツゴロウさん曰く、「ギター内蔵のマイクにこだわっており、このマイクを求めて有名な方から発注があったが、ちゃんとしたミュージシャンの方に使ってもらいたくて」と言った。上京した時にマーチンモーリスを薦められた田舎モンが、ミュージシャンとして認められた瞬間だった。もちろんその言葉も嬉しかったが、見た目が一発で気に入り、その場でいただき、その後一番長く一緒に旅しているギターになった。
次にエレキギター。こちらも楽器メーカーの方から使ってみないかといただいたエレキギター、ナビゲーターというメーカーの赤いテレキャスター。ずっしりと重くて見た目も気に入った。エレキはそれからこれ一本。先日リペアに出してパワーアップ。
次に2年前に、札幌で一人ワンマンをするべく購入したギブソンJ-100。このあたりから自分が出したい音がはっきりしてきて、見た目と合わせて音もこんな感じがいいなって思いが強くなってきた。何軒もギター屋さんを周り、何日もかけてやっと購入。深くてでっかい音がする。
そして今回のギブソンJ-45。ギブソンの中では定番のJ-45だけど、これもまたちょっと違う。
クロサワ楽器と三木楽器が共同で、今までのギブソンJ-45のいいとこを組み合わせて設計し、それをギブソン社に持って行きコラボレーションして制作された限定100本のギター。日本人の手が入っているのもいい。
まず楽器屋に行き、その見た目に惚れ、かっちょいいですねーと試奏させてもらうべく店員さんがチューニングをして、僕に渡してくれる前にジャランと弾いた。その音がバイクのエンジンのように聞こえて風が吹いたみたいになった。やべぇなとおもった。自分で弾いてもやっぱりいい。うっわーとおもった。でもまだ買おうとはおもっていなかった。
2年前に買ったJ-100は見た目も音も好みなのだが、バーンって弾いた時にドーン!って鳴るイメージ、深くてでかい。が、使っていてバーン!と弾いた時にバーン!って鳴るギターが欲しいとおもっていたときに、このJ-45に出会った。時間があるとその楽器屋さんにいき、試奏させてもらっていた。家に帰るとまるで恋したように思い出す。あの鳴りが欲しいとなった。なったが毎回、いや忘れようとした。が、時間がたつとまた楽器屋さんへ行き試奏させてもらっていた。そんなある日、毎回試奏させてくれる店員さんが「中尾さん、このギターの試奏回数最多ですよ」と言ってきて、その日は弦も張りたてとのことでさらによく鳴っていて、「ですよねぇ」と言って、ここまで何回も忘れようとして来ちゃうってのは、やっぱりそういうことかもなぁと思って買うことを決めた。
そしてやはり、買ってよかった。一人でスタジオに入り、ただただかき鳴らす。バイクに乗ってるみたいになる。なんなんだろうか、やみつきになる。延々どこまでもいけそうになる。ちょっといけないなとおもうのは、ライブのための練習で入ってるのに歌わずにずっと弾いてしまう。例えば曲作りでもただただ弾いちゃうってことになるんじゃないかというところ。ギブソンは音がじゃじゃ馬だとよくいうけど、定番のJ-45を弾いてみてようやくわかった。じゃじゃ馬だけに手なずけるのが難しく、またやみつきになる。6本の弦がまとまってバン!と前に出て、それでいてはみ出していて無限な感じ。それを手なずけて、もっと歌を乗せて走れるように、曲をつれてくるようにならないといけないなとおもうも、ようやく出会った感があり、何度も迷ったけど買ってよかった。
が、ライブで使うとなるとアコギはなかなか難しい。ギター本体の鳴りに加えて、ライブハウスなどで弾く場合は電気を通すためにギターにマイクを内蔵させる。そのマイクとも相性がよくないといけなかったり。会場の空間、機材、弾く曲などによってかわってくるので、これからも、スタッフォードとJ-100、そしてこのJ-45をその時々に応じて使い分けていけたらと、そしてこれからも自分とこのギター達の旅を、どうぞ見守っていただけたらとおもう次第です。
と、今月は長くなってしまったのでこの辺で。
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ギターも奥が深いですね。まわりにギターを持っている人がいないので詳しく違いとか聞いたことがなかったから読んでて面白かったです。
返信削除中尾さんとギター達にもいろんな思い入れと歴史があるんですね。
吉祥寺のライブで初めてJ-45の音を聞いた時、J-100とは音の響きが違うなって思いながら聞いてたら、そうか音がストレートに響くんだって気づいて納得。
これからも中尾さんとギター三者三様の音の旅を楽しみにしています。
諭介さんのギター遍歴面白かったです!私はライブを見るときにどちらかというと歌声や歌詞、表情だったりを重視してしまうので、正直ギターの音をそんなに気にしていませんでした。もしかしたら、新しいギターにも気付いてなかったかも、と言ったら、怒られてしまうのかな(笑)だけど、諭介さんのそれぞれのギターとの出会いと別れ、愛情や音の出し方などこだわりも知ってしまったので、これからはギターの音を聞いてみるという新たなライブの楽しみができました。私の好きなギターの音はどれだろう!そしてきっと諭介さんだけじゃなくて、他のミュージシャンの人達が持っているギターにも、それぞれにまつわる物語があるんでしょうね。カセットテープのラジオ番組のところ好きな話でした。
返信削除諭介さんとギターの歴史、興味深く読ませていただきました。
返信削除私もギターを一本だけ、ちゃんとしたのじゃなくてオモチャみたいなのを持っているけど、独学でほとんど弾けないまま手を怪我して以来、全く弾いてないけど、いつかまたちゃんとしたのでチャレンジしてみたくなりました。
ギターの種類も音の違いも正直よく分からないけど、これからは諭介さんだけでなくギター君達にも注目しつつ旅について行きたいです。